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IPv6 Only Network対応と現在のv6アクセス状況

この記事は Nikkei Advent Calendar 2020 10日目の記事です。

日本経済新聞社は今年、電子版ウェブサイトをはじめ多くのサイトでIPv6アクセスが可能になりました。 2020年12月現在、電子版に IPv6 Only Networkからアクセスしてもログインや画像表示を含めほぼ問題なく動くようになっています。

今回はIPv6の簡単な説明と、日経電子版へのアクセスログをもとにIPv6普及率がここ数年 どう推移して来たかを紹介しようと思います。

IPv6とは

IPv6はOSI参照モデルにおいてネットワーク層に位置付けられるプロトコルです。 主な特徴として現在主流のIPv4と比べてアドレス空間が非常に広い点が挙げられます。

IPv6の仕様自体は20年以上前から大まかに決まっており、 IPアドレスの枯渇問題やNATの問題への対応が出来ると期待 されていましたが、IPv4からの置き換えは最近まで進んでいませんでいた。

しかし、

  • IPv4のIANA在庫が2011年に枯渇
  • Appleが2016.6以降、アプリでIPv6対応必須に[1]
  • 各携帯キャリアがIPv6利用を開始[2]

などから近年急速に利用が増えています。

2017年以降は日本国内において「高速(IPv4 PPPoEの混雑回避ができるため)」 という名目でよくIPv6の宣伝を目にするようになりました。

現在の環境でIPv6を利用できるかは以下のようなサイトで確認できます。

https://ipv6test.google.com/intl/ja/index.html

IPv6の利用状況

Google計測のIPv6普及状況

IPv6の利用状況はGoogleが長期でモニタリングしており、 日本国内での利用率は既に30%を超えています。 https://www.google.com/intl/ja/ipv6/statistics.html#tab=ipv6-adoption ipv6statistics

平日はIPv6比率が低く、土日は高いのが分かります。 これは多くの国において、家庭のネットワークはIPv6が使えるようになり始めている一方、企業はまだIPv4限定のケースが多いためです。

余談ですが、この統計をみると 2020年3月頃以降は平日のIPv6比率が如実に高くなっています。 在宅が増えたことにより、この期間でIPv6利用が伸びたのだと思われます。興味深いですね。 (ただし、9月に入って多少戻っていることから、世界的に在宅比率が多少減ってきているのかもしれません。)

RIPE NCCによるIPv6普及率

RIPE NCCでは、ルーティングテーブル内のASの総数に対して IPv6プレフィックスをアナウンスしたASの割合をIPv6普及率として計測して公開しています。 http://v6asns.ripe.net/v/6?s=_ALL;s=JP;s=US

こちらによると、世界全体でIPv6普及率は28%、日本国内に限ると49%前後のASがIPv6に対応しているようです。

日本経済新聞社におけるIPv6

日本経済新聞社ではFastlyやCloudFrontなどのCDN(Content Delivery Network)を利用しています。 これらのCDNを通した場合、クライアントに対してIPv6での接続環境は比較的容易に提供が可能です。

CDN経由でのアクセス化、IPアドレスベースでの接続制限確認やdualstackの動作チェックなどが済み、 2020年時点で日経電子版はほぼIPv6で動作するようになりました。

タイムライン

  • 2017年2月 vdata.nikkei.com がIPv6対応
  • 2017年8月 スマホ向けサイト がIPv6対応
  • 2017年8月 アプリAPI がIPv6対応
  • 2018年4月 画像表示 がIPv6対応
  • 2020年2月 www.nikkei.com がIPv6対応
  • 2020年4〜9月 IDシステムでIPv6対応

これらのドメインで一通り対応したため、ログイン処理も含めた電子版への アクセスは IPv6 Only Networkで動作するようになりました。

IPv6対応にあたって注意が必要だった点

CDNを利用している場合、IPv6対応は ドメインのAAAAレコードにIPv6エンドポイントを記載するだけで完結します。

この作業自体は簡単ですが、問題が出ないよう主に以下の3点に注意していました。

ファイアウォール

クライアントからのアクセス元がIPv6になるため、 上位レイヤでのIPアドレス制限を利用している箇所はIPv6にも対応させる必要があります。

TCPレイヤ以下で接続拒否している場合は、IPv6で接続拒否しても IPv4にフォールバックが発生して接続が上手くいくことがあります。 しかしアプリケーションレイヤで接続元IPを拒否している場合は、一度IPv6で TCPコネクションが確立してしまうためIPv4へのフォールバックが発生しません。

例えばHTTPでのIP制限では、403などのエラーが返ってしまうことになるため、設定に注意しましょう。

アクセスログ

アクセスログにIPv6が入ってくるため、必要に応じてDBのカラム型を変える必要があります。

例えばElasticsearchはv5.0までIPフィールドがIPv6をサポートしていなかったため、DBの更新が必要です。

DNSレコード長

AAAAレコードはサイズが大きいため、DNSのTCPフォールバックが起きないよう最小限のみ記載します。

世の中にはファイアウォールでTCP Port53をブロックしていたり、 EDNS0に対応していないDNSプロキシがあったりします。 これらが原因で512Bytesを超えるDNSレスポンスだと表示できなくなる環境があるようです。 これらは各組織のネットワーク管理者などに対応を依頼する必要がありますが、かなりの数あり現実的ではないため、 可能な限りTCPフォールバックを回避するのが望ましいです。

アクセス状況

自社のアクセスログをもとに、IPv6率の推移を細く見てみました。 (図は当時の資料からの抽出のため、毎回色が変わっています。)

2017年2月

平日はおよそ7.5%がIPv6, 休日は12%の人がIPv6からアクセスしていました。 IPv6_2017_02

2017年7月

平日昼間は10%程度、夜間や土日は15〜20%がIPv6からのアクセスです。 2月に比べて急増しました。 IPv6_2017_07 携帯各社からのアクセスは、この頃IPv6対応に変わってきています。

2018年4月

IPv6でのアクセスは15%〜25%になっています。

IPv6_2018_04 休日や夜間はIPv6比率が高い傾向が出ています。

2020年12月

IPv6_2020_12 直近では、平日約22%、土日は約33%がIPv6でのアクセスとなっています。

その他、データから分かること

IPv6ならアクセスが高速といった謳い文句はよく見ます。 そこでブラウザのResource Timing APIから見たウェブページ表示速度について IPv4とIPv6で比較してみましたが、 ざっと調べた範囲では有意な差を見られませんでした。

企業からの安定したIPv4接続と個人用プロバイダからの混雑時間帯での接続など、 もっと細く分けて分析すれば差があるかもしれません。

ウェブの表示速度は多くの要因が関係してきます。 混雑時間帯における大容量データダウンロードなどPPPoEのボトルネックが大きいケースを除いて、 サーバ側のIPv6対応がクライアントに対してメリットがあると示すのはなかなか難しいですが、 また時間をみつけて調査しようと思います。

終わりに

本記事では、IPv6の簡単な説明と、アクセス状況の紹介をおこないました。

しばらくネットワークレイヤを見ていない人は、最近のIPv6普及率に驚かれたかもしれません。

Webやアプリ開発者でネットワークを意識する人はもしかすると少ないかもしれませんが、 新たな発見があるかもしれないので、この機会に興味を持ってもらえれば幸いです。

CDNやクラウドサービス等を利用していれば比較的容易にIPv6対応が可能です。

World IPv6 Launchから8年ほど経った現在もIPv6対応サイトはあまり多くない状況ですが、 この機会にあなたのサイトもIPv6対応させてみてはいかがでしょうか。

脚注

[1]: Apple IPv6のみのネットワーク, https://developer.apple.com/jp/support/ipv6/

[2]: Geekなぺーじ 日本国内携帯3社、2017年度中にIPv6導入, https://www.geekpage.jp/blog/?id=2017-2-8-1

梅崎裕利
ENGINEER梅崎裕利

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