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人工衛星データから立ち上げる記事企画

編集局・メディア戦略部の加藤です。日経ビジュアルデータのフロント/バック/DevOpsを担当しています。

日経ビジュアルデータは、読者にわかりやすい情報を伝えるため、インフォグラフィクスやデータビジュアライゼーションを駆使して作られる記事コンテンツ群です。 コンテンツの多くは、記者発案の企画で制作が始まります。ただ、最近はエンジニアやデザイナーの企画からコンテンツ制作が始まるパターンも増えてきました。

この記事では、エンジニア発案の企画の一例として、人工衛星のデータを起点とした私の企画案を少しだけ紹介します。

人工衛星から見るコロナの影響

今年の夏頃には「コロナ自粛で空気がキレイになった地域」の可視化と、各地のルポ取材を連動する企画を提案しました。 コロナで人の移動に伴う経済活動が停滞し、その影響で大気汚染物質が減少した地域を分析するという企画です。

当時、コロナによるロックダウンの影響で世界各地の大気汚染が改善した、との報告が一部海外メディアで報道されていました。

交通量の減少や工場・観光施設の休業により、衛星から観測したNO2やCO2などの大気汚染物質が減ったとの内容です。 日本はロックダウンはされていないものの、緊急事態宣言による全国的な移動自粛期間があり、状況は類似していました。

地域ごとの大気の変化が観測できれば、その地域の経済活動の変化を探るきっかけになります。 そこで私は、次のモックアップを制作しました。

Satellite data mockup

主に化石燃料を燃やした際に発生する大気汚染物質の1つ、NO2の前年比をメッシュで可視化しました。 比較期間は、緊急事態宣言の対象地域が全国となった2020年4月16日〜1ヶ月間と、前年の同期間です。 データセットとして利用したESAのNO2濃度データが2018年7月から始まるデータであるため、比較対象を前年のみとしました。

モックアップの制作では、衛星データの取得・整形といったバックエンドのプラットフォームにGoogle Earth Engineを、デザインした地図をWebに表示するフロントエンドのサービスにMapboxを用いました。 バックエンドフロントエンドそれぞれでソースコードを公開していますので、興味ある方はご覧ください。

このモックアップからは、例えば次のような変化が読み取れます。

  • 都市部(東京や大阪など)ではNO2が前年より減少した
  • NO2が元々多かった地域は減少量が著しい
  • 越谷市や各務原市といった都市近郊のベッドタウンではNO2が前年より微増した

これらのように、取材のタネは全国各地に散らばっているように見えます。

ただ、前年分までしかデータが準備できなかったことから、このモックアップが実際の記事コンテンツ企画に繋がることはありませんでした。

人工衛星から見る被災地の復旧

つい先日には「震災の被災地に光が戻ったか」を可視化し、被災地の復旧状況を調査する企画を提案しました。 例えば東日本大震災などの大規模な震災を対象に、被災地域の夜間光の推移をタイムラプスとして地図上に描画。そのタイムラプスをもとに震災で失われた光が戻っている/いない地域を推測し、その原因を調査するという企画です。

まずモックアップとして作ったのがこちらです。

Nightlight per month timelapse

日本列島を対象に夜間光を描画したタイムラプスです。 こちらも前節と同様に、衛星データの取得・整形にGoogle Earth Engineを用いました。ソースコードはこちらです。 利用したデータセットはNOAAより公開される夜間光の月間平均データで、取り扱った期間は2012年4月〜2020年4月です。

初めは、データセットを整形せず、そのまま月単位で夜間光を描画しました。 しかし、夜間光が描画されていない月がタイムラプス中に見られます。 それというのも今回のデータセットには、夜間光を上手く観測できていない期間・日本列島上の地域が含まれています。そのため、月単位で光量の多寡をそのまま比較することはできません。 そこで次に、年単位で累算したタイムラプスを用意しました。ソースコードはこちらです。

Nightlight per year timelapse

年単位にすると比較しやすくなりました。 それでは、次の3つの震災を対象に、被災地の夜間光の変化を見てみてください。

  • 東日本大震災(2011)
  • 熊本地震(2016)
  • 北海道胆振東部地震(2018)

それぞれ局所的な変化は確認できても、劇的な変化は確認できないかと思います。 この結果については、いくつか原因が推測できます。例えば、次のような原因です。

  • 年単位で集計してしまったため、衛星から観測できるほど顕著な変化が確認できなかった
  • 被災地の現地住民が戻ってきやすいよう、商業施設などで光が灯されていた
  • 夜間光を描画するパラメータの閾値に問題があった

これら推測した原因を検証するには、別のデータセットを掛け合わせるなど、別途調査が必要です。 続く調査で何か進展ができたら、また別の形で報告ができればと思います。

おわりに

この記事では、エンジニアによる記事企画の一例として、人工衛星のデータを用いた企画案を2つ紹介しました。

今回紹介したような衛星データを用いる私の企画記事はまだ表には出ていませんが、近いうちに皆さんの目に触れる記事を世に出せればと思っています。 今後もし見かけることがあったら、是非読んでやってください。

加藤皓也
ENGINEER加藤皓也

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