日本経済新聞社のAdvent Calendarの22日目の記事です。
こんにちは ! 戦略コンテンツグループの伊藤と申します。この BLOG ではエンジニアの方々の記事が多いなか、今回はデザイナー視点で現場の仕事を紹介をさせて頂きます。こんなこともやっているよーという軽い仕事内容の紹介です。5分で読めるようにまとめてみます。
どんなとこで働いているの?
私は記事を書くことはほぼありませんが、編集と呼ばれる日々のニュースの取材、出稿を担う記者と同じ部局で働いています。そのなかでも私が所属している戦略コンテンツグループではビジュアルデータをはじめとしたインフォグラフィクスやデータビジュアライゼーションを駆使して作られるコンテンツの制作を担当しています。2022年12月現在、チームにはデザイナー・ディレクターだけで私を含め8名が在籍しています。電子版ならではの実験的なニュースの伝え方を通して、読者に新たな発見や驚きを届けられるように日々格闘中です。
今回は数ある制作物の中からフォトグラメトリーという手法を使ったコンテンツ制作の裏側を少しご紹介させて頂きたいと思います。
フォトグラメトリーコンテンツの裏側
「フォトグラメトリー(Photogrammetry)」とは、被写体をさまざまなアングルから撮影し、その画像から立体的な3DCG モデルを作成する手法です。近年 PC スペックの向上や Blender や Unreal Engine5 といった制作ツールの充実によって3D モデルを扱うことは身近になってきました。 NewYorkTimes といった海外メディアをはじめ我々のような報道機関にもそういった3DCG を取り入れたコンテンツが当たり前のように広がってきています。その波に乗り遅れてはいけないということで日経でも実験的にコンテンツをいくつか制作してきました。
1.パラ車いすその形にはワケがある
パラ競技で欠かすことの出来ない車椅子が競技ごとにどのような機能の違いがあるのか?競技用車椅子の開発、製造をされているオーエックスエンジニアリング社様協力のもと、2021年に開催された東京パラリンピックに合わせて制作したコンテンツです。このコンテンツでは記者と撮影を担当されるカメラマンの方と一緒に取材に同行させて頂きました。たまにそういった機会もあるのが、この仕事の面白い部分だなと個人的には思っています。
約100枚ほどの写真からフォトグラメトリーソフトを使い3DCG 化したモデル。一見するとこの状態で完成と思いきや、データ量が大きいのと細かい形までは再現されていないので修正していきます。
スポーク部分などを修正、形やテクスチャーを整えたモデル。 glb というファイル形式で書き出します。 web で表示させるためデータ量を必要最低限とする作業に骨が折れました。現場でみた実物のカッコよさを損なわずに伝えようと制作していきました。
チーム内のエンジニアさん協力のもと原稿と噛み合うようにカメラアングル調整をして完成させました。
このコンテンツでは作成した3D モデルをスクロールで表示させながらあくまで記事の一部となるような体験設計にしています。
2.山上容疑者は何を見た3Dモデルで検証安倍元首相銃撃事件 報告書を読み解く
既に事件は様々な角度からの映像により検証されてきてはいましたが、新たに発表された警察の報告書の内容を盛り込むこと。容疑者の目線を再現すること。以上の二つの情報を加え、改めて読者に事件の全体像を把握する一助になればということで制作したコンテンツです。
初めからフォトグラメトリーの用途で撮影したものではなかったのですが、幸い現場を空撮した写真があったのでそちらを使って現場の3D モデルを作成しました。
生成したモデルのスケールを合わせる為にグーグルマップなどで目安となる部分を測るなどして現場を再現していきました。また不要な部分や足りない部分も発生するので削ったり追加するなどしていきます。
このコンテンツでは再現した3D モデルを画像で出力しコンテンツの中で使用しました。鍵となった場面を紙芝居的に切り替えることで、重要なポイントのみを抜粋して解説しています。
おわりに
今回はフォトグラメトリー、3D 技術を使った二つの事例を紹介させて頂きました。今後も新しい手法やテクノロジーを積極的に取り入れて活字だけでないニュースの伝え方、テクノロジーを上手く活用した報道コンテンツの制作に邁進していきますので、ビジュアルデータおよび日経電子版を宜しくお願い致します !!
明日は23日目、石原祥太郎さんによる「日本経済新聞社での事前学習済み言語モデルの構築と活用」です。お楽しみに!