お客様の要望や反応を収集し、プロダクトに反映させることは昨今のサービス・プロダクトにおいてなくてはならない活動の一つである。日経では様々なメディアに展開するそれぞれのサービスでお客様からのご意見・ご要望を収集し、プロダクトの方向性に反映させている。
ユーザーの反応を収集するには「お問合せ、SNS での反応など定性的なデータを収集する」方法と、「ユーザーのログデータなど定量的なデータを収集・分析する」方法が挙げられる。
本稿ではこのうち「お問合せ、SNS での反応など定性的なデータを収集する」手法に焦点を当てる。筆者が開発に携わっている日経電子版におけるご意見・ご要望の収集方法や、収集された声をどのようにプロダクトに反映されているのかについて解説を行う。また、収集したご意見・ご要望をどのようにプロダクトに反映しているのかを紹介する。
どのようにユーザーの反応を収集するか
日経では異なる環境から透過的にご意見・ご要望を収集するために「Kaizen Request」と呼ばれるサービスを構築している。日経電子版が展開している環境はウェブ・iOS および Android である。それぞれの環境は開発言語・ネットワークへの接続性など異なる部分は大きいものの、ユーザーから見えれば単一のサービスである。ユーザーの反応をサービス単位で取りまとめて透過的に閲覧、検討できるようにこのようなシステムを構築している。
「Kaizen Request」は AWS API Gateway 上にデプロイされた AWS Lambda 群である。HTTP 経由で情報をポストすることができ、データの整形・ユーザーログとの紐付け・社内共有サービスへの投稿などを個別の Lambda で処理している。また、日経の提供する様々な iOS、Android に関しては登録フォームを含んだライブラリが開発されており、日経電子版以外の iOS, Android アプリにも容易に展開できるように整備されている。
次章では社内の共有サービスに投稿されたご意見・ご要望がどのように活用されているのかを解説する。
ご意見・ご要望をどのように活用しているか
「Kaizen Request」で収集されたお客様のご意見・ご要望は社内の Slack および Backlog に蓄積される。なぜ情報を蓄積する場所が複数存在するのか。それは、ご意見・ご要望を活用する目的が複数あるからである。
Slack ではご意見・ご要望をフロー情報として監視することで障害への素早い対応を実現している。Slack のチャンネルはモバイル・ウェブ・データなど複数のチームが監視している。Slack に障害の情報が投稿されると、複数の部門が様々な観点からチェックし、チャンネル上で状況を共有することで素早く復旧へと繋げることができる。
Backlog ではご意見・ご要望をストック情報として管理し、定期的にレビューすることでプロダクトに反映させている。レビューの運用はチームそれぞれであるが、筆者の所属するモバイルアプリチームでは隔週で「ご意見・ご要望レビュー」と呼ばれる会議を行っている。この会議では Backlog に収集されたご意見・ご要望を開発チーム全員でレビューする。プロダクトマネージャーも参加するため、レビュー内容をプロダクトに反映するかどうか素早く判断することができている。レビューの際にはお褒めの言葉を取り上げることもあり、メンバーのモチベーション向上にも一役買っている。