日本経済新聞社でモバイルアプリ開発を担当している篠原です。 本記事では、2023 年 4 月 17 〜 21 日に実施したデジタル人材向け新卒研修について紹介します。
研修概要
「デジタル人材向け新卒研修」(以下、デジタル研修とする)とは、エンジニア職の方を対象にデジタル分野の講義を中心とした研修です。弊社では本研修を 2017 年度から行っており、今年で 7 回目の開催となりました。昨年行われたデジタル研修の模様も別記事に掲載されております。
本年度は次のような日程で新卒研修のプログラムが実施されました。
- 4 月 3 〜 14 日:全職種対象の新卒研修
- 4 月 17 〜 21 日:デジタル研修
- 4 月 24 日〜:各チームへの本配属
2020 年の新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、このデジタル研修はオンライン参加を中心として実施されていました。新卒メンバーの参加形式として、昨年はオンライン参加とリアル出社の併用方式により実施しましたが、今年度については全日程においてリアル出社による実施となりました。新卒メンバーにとって対面によるコミュニケーションは特に重要だと考えており、運営側もどのようなことで困っているのかフォローしやすいと判断したためです。
カリキュラムについて
本記事で紹介するデジタル研修は、 次の目的に沿って社内エンジニアが中心となってカリキュラムを考えました。

講義の内容は大きく分けて 2 種類あります。 1 つめは配属後に必要となる基礎的な知識を身につけるもので、座学やハンズオンの形で、実際の業務によりそった内容を解説します。各分野の専門的な知識、企画立案を進めるためのデータを扱うスキルなどを広く学びます。 2 つめは、日経のデジタル系の事業へのドメイン知識に関する知識を涵養するものです。各チームでどんな施策が動いているかを紹介し、知っていることの引き出しを増やしていきます。
これらの講義はすべて覚えてもらって帰ることを目的としていません。各分野の基本的なコンセプトをおさえ、必要なときに自分で学べるような知識の引き出しを作ることが大切です。また、直近の仕事にかかわらない分野の話を知ることで視野を広げるとともに、社内の誰が知っていそうかというあたりがつけられるようになることが狙いとなります。
技術的な内容の講義の一覧
実施された技術的な内容の講義の一覧です。一部の講義については資料公開を行っています。 各分野に精通した社員が、それぞれ 1 〜 2 時間ほどの講義を担当しました。
- Web API
- Web の基礎(前編・後編)
- モバイルアプリ開発
- UI/UX
- セキュリティ
- 機械学習
- Atlas(データ処理基盤)の紹介とハンズオン
- GCP によるクラウド研修
- 新聞基礎
- 財務諸表とその見方
- CMS(コンテンツ管理システム)
- 情報収集
- 日経の SRE(Site Reliability Engineering)
- 日経 ID 認証システムおよび認証・認可の基礎
API や Web 、モバイルアプリ、 UI/UX などに関する講義では汎用的かつ具体的な開発手法について解説が行われました。 講義内容は表面的な話に留まらず、実際の社内案件を例に工夫点を詳細に解説するなど実践面にも重きを置いた内容でした。
セキュリティについては講義とハンズオンの 2 回に分けて実施しました。まず座学でセキュリティの基礎を学んだ後、後半のハンズオンではセキュリティ技術を体系的に学べる学習サービスであるKENROを用い、より高度なレベルの内容に取り組みました。
機械学習では、最近話題の ChatGPT を例に交えながら、機械学習に関する一般的な手法や論文が紹介されました。データ分析という観点においては、日経独自のデータ処理基盤システムであるAtlasについて学び、そのデータ解析や集計方法を手を動かしながら学ぶ講義もありました。
昨年に引き続き行われたクラウド研修では、 Google から講師をお招きして GCP を用いた研修を行いました。本講義のみ 4 時間ほどの枠を確保し、時間をかけて各自のペースでハンズオン形式で進めてもらいました。本格的で実務経験につながる内容になったと思います。
日経独自の講義として、「新聞基礎」「財務諸表とその見方」「CMS」「情報収集」などもありました。新聞業界特有の用語や財務表知識、 CMS における新聞紙面の組み方などは経済情報を扱う新聞社ならではでの講義となりました。
今年からの初めての取り組みとして、 SRE / 認証認可の講義がありました。 SRE とは「信頼性にまつわるあらゆる事を考え実行すること」であり、弊社の SRE チームは複数チームに対して横断的に関わっています。 認証認可の講義では、OAuth 2.0 を題材にした基本的な認証認可の仕組みについて解説した後、日経グループで使用されている日経 ID の使われ方や開発中の機能について紹介がありました。
今回は技術的な講義のみリストアップしましたが、弊社のデジタル部門には数多くのチームや関わりのあるシステムが存在するため、デジタル部門に所属するチームや社内組織、日経電子版 2023 年の取り組みについての紹介もあわせて実施いたしました。 さらにリアルで開催したことにより役員や先輩社員との交流機会も設けられ、対面でのコミュニケーションの機会を数多く実施することができました。

受講者の反応
全日程終了後、受講者アンケートを行いました。一部の声を抜粋してお届けします。
- 知らなかったことをたくさん学ぶことができた5日間でした。実際に手を動かしながら取り組める研修も多くあり、楽しみながら学ぶことができました。企画・運営など、ありがとうございました。
- 全体研修で不足していたドメイン知識を補うことができ、また、研修の目的であった知識の引き出しを作ることができたと思います。
終わりに
本記事では 2023 年度に実施したデジタル研修の新卒研修を紹介させていただきました。研修を修了したメンバーは、既にそれぞれのチームへ配属されています。配属後はチーム内でのカリキュラムに沿うことが通例であり、 OJT としてすぐに実際の業務に携わる場合もあれば、チーム業務に特化した研修を追加で受ける場合もあります。
筆者自身もデジタル研修を受けた後、モバイルアプリチームへ配属されましたが、追加でアプリについての手厚い研修を受けさせていただきました。 日本経済新聞社は人を育てるという意識の強い会社だと思います。今回紹介したデジタル研修以外にも、様々な研修が用意されていますし、新卒社員だけでなく既存社員も受けることができるような制度もあります。
運営メンバーの一員として、研修を受けたメンバーの今後のご活躍を心より願っております。